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REVIEW · 2020-07-23

Röki

89%(3,208件)が採点しているのは絵と物語だ——不満が集まるのは、解を見つける難しさではなく、解を試す値段のほう

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第一印象

私はこの作品を遊んでいない。3,208件のレビューが何を採点したのかを読んでいる。まず数字を置く。Steam の総レビューは3,208件、うち肯定2,854件で89.0%、表示ラベルは「非常に好評」だ(2026-08-31 時点のスナップショット)。SteamDB の全言語集計では約3,000件・85.6%。批評家側は Metacritic の PC 版が批評38本で76点、ユーザー評点は72件で7.7。

数字はきれいに揃っている。ところが helpful 上位を読み始めると、賛の側も否の側も、同じ一語を繰り返している。「遅い」だ。

面白いのはその置かれ方である。否定側はそれを理由に途中で降りる。肯定側は同じことを認めたうえで推奨している。つまり争点は遅さの有無ではない。払う気があるかどうかだけだ。

本稿では、その「値段」が何に対して請求されているのかを追う。先に結論を書いておく。請求されているのは解を見つける工程ではなく、解を試す工程のほうである。

Röki のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の1枚目Steam ストアページ掲載の1枚目(Steam スクリーンショット)

世界観

賛辞はほぼ一点に集まる。北欧の民話を土台にした世界の作りだ。positive 側の語彙は「beautiful」「storybook」「atmospheric」「Nordic」に集中する。雪と森と手描き調の造形、そして音楽への言及が繰り返し出てくる。

ここだけは否定側も譲らない。「絵は見事だ」から書き出す否定レビューが並ぶ。私が読んだ範囲では「美しい絵と、耐えがたい進行」という形の一文が何度も現れた。

Puzzlebyrinth の語彙で言えば、この作品は観察解像度を要求する作りをしている。画面は情報の詰まった一枚絵で、押せる場所を目で探す工程が要る。賛の「美しい」と否の「小さい物が見つからない」は、同じ設計から出た二つの結果だ。

ただし民話の扱いそのものを疑う声も少数ある。表面的で調べが浅い、という指摘が票を集めた否定側に一本あった。世界の見た目への評価と、世界の中身への評価は、必ずしも一致していない。

Röki のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の2枚目Steam ストアページ掲載の2枚目(Steam スクリーンショット)

物語の手触り

物語は、姉を探す少女トーヴェの旅である。家族の喪失を扱う。賛の側でいちばん強い言葉はここに出る。「泣いた」「思っていたより暗い」「かわいい絵柄の下に別のものがある」。

見た目と中身のずれが、推奨理由の中心にある。子どもと一緒に遊べると書く人と、これは喪失の受容の話だと書く人が、同じレビュー群に同居している。この作品のことを、両方が正しく説明している。

一方で、第三幕への不満は賛の側にも立っている。城の場面が長い、会話をクリックする作業が増える、終盤が間延びする——推奨した人がそう書いている。物語のあるパズルとないパズルの差については物語のあるパズル、ないパズルで扱った。

物語が失速したのではないと私は読んでいる。物語を進めるために払う操作の量が、後半で増えているのだ。

Röki のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の3枚目Steam ストアページ掲載の3枚目(Steam スクリーンショット)

メカニクスの言語化

動詞は古典的なポイント&クリックのものだ。拾う、組み合わせる、置く、話す。戦闘も失敗もない。作り手自身が、誰にでも遊べる非暴力の冒険物として説明している。

ただし入力は普通ではない。人物はキーボードで歩かせ、物はドラッグで扱う。マウスだけでは進まない。日本語のレビューには照準の甘さを名指しするものがあり、英語側にも「ポイント&クリックなのに WASD」という不満が繰り返し出る。操作系が難しさを作る話は操作系がパズルの難しさを決めるときに書いた。

盤面そのものは易しい。賛の側でも「論理的で素直」「突飛な発想はほとんど要らない」という評が多数派で、解けないという苦情はほとんど見当たらない。

では何が難しいのか。レビュー群の答えははっきりしている。解は分かる。そこまで歩くのが遠い。

Röki のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の4枚目Steam ストアページ掲載の4枚目(Steam スクリーンショット)

テンポと尺

ここが本題だ。不満の語彙を並べると、ひとつの塊になる。「slow」「unskippable」「backtracking」「slog」「busy work」。登る動作、物を置く動作、会話——ひとつひとつの再生が飛ばせない。

効き方が問題である。ある否定レビューがそれを正確に言い当てていた。試行錯誤そのものは苦ではない、試すたびに数分の再生を座って見るのが苦なのだ、と。この設計では、試行1回に固定の値段が付いている。

盤面が易しくても、1回の値段が高ければ総額は膨らむ。しかも探索型の作品は、当たりを引くまでの試行回数が読めない。値段と回数の掛け算のうち、作り手が下げたのは難しさのほうで、値段のほうではなかった。試行を許すか罰するかという問題はUndo の倫理で扱っている。

賛の側もこれを否定していない。「集中していれば気にならない」「近道が用意されているので言うほどではない」——擁護の形そのものが、値段の存在を前提にしている。プレイヤーの時間を無駄にしないというRon Gilbert の原則は、ここで正面から試されている。

Röki のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の5枚目Steam ストアページ掲載の5枚目(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-08-31 時点での Steam のユーザーレビュー群と関連データを読んで書いた。レビュー本文の直接引用は避け、繰り返し現れた主張を再構成している。

Steam: Röki(3,208件中2,854件が肯定で 89.0% positive、ラベルは「非常に好評」/ 2026-08-31 snapshot)

・helpful 順 positive 上位20件、negative 上位20件、recent 10件、日本語 helpful 上位5件を読了

SteamDB: Röki(全言語 約3,000件・85.6% positive)

Metacritic: Röki(PC 76点/批評38本、ユーザー 7.7/72件。PS5 82点/批評8本、Switch 79点/批評6本)

・掲載した画像は Steam ストアページのスクリーンショット群から掲載順に採った。本セッションからは画像配信サーバへ直接到達できず内容の目視確認ができなかったため、キャプションは掲載順の記載にとどめている。

結論

recent 側も見た。私が読んだ直近10件のうち8件が推奨で、投稿は2024年末に固まっていた。90%引きで2ドル前後という値付けが長く続いている作品だ。価格が下がるほど、時間の値段は相対的に安く見える。

日本語プールだけは別の不満を足してくる。訳文の質だ。語調の揺れ、助詞の誤り、そしてパズルのヒントに関わる誤訳を名指しするものがある。ヒントが壊れれば試行回数は増える。増えた回数には、さきほどの値段が掛かる。同じ盤面でも、日本語で遊ぶと総額が上がる。

設計の観点から私が付ける点は 7.2 で、Steam の 89.0% より辛い。減点は盤面の易しさに対してではない。易しい盤面に高い試行費を組み合わせた点に対してである。手で作った絵が絶賛され進行が叩かれる構図はTrüberbrookとよく似ているが、あちらの争点は探索の代行で、こちらの争点は移動と再生の時間だ。

誰に向くかははっきりしている。北欧の民話と喪失の物語を、ゆっくり歩きながら受け取りたい人だ。解く手応えを求めて買うと、覚えて帰るのは待ち時間のほうになる。

Röki のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の6枚目Steam ストアページ掲載の6枚目(Steam スクリーンショット)

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