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REVIEW · 2021-02-11

The Room 4: Old Sins

ドールハウスに畳まれた仕掛け箱——「易しくなった」という評を読む

Steam store ↗

第一印象

Steam のレビュー欄を開くと、まず数の壁がある。全言語の総レビューは 17,927 件、うち好評 17,657 件、不評 270 件。比率は 98% で、ラベルは「圧倒的に好評」だ(2026-07-30 snapshot)。直近30日も 88 件で 96%、五年前の発売から評価はほとんど動いていない。この数字だけを見れば、読み解く余地などなさそうに見える。

だが helpful 順の上位を読むと、賛辞の語彙は思ったより狭い。relaxing(くつろげる)、no stress(時間制限がない)、polished(作りが丁寧)、そして「賢くなった気がして、次の瞬間に間抜けになって、また賢くなる」という言い回し。「他人と一緒に行かなくてよい脱出ゲーム」という一文が上位に並ぶあたりに、この作品が実際に売っているものが出ている。

一方、270 件しかない negative 側の語彙は驚くほど揃っている。シリーズで最も易しい、tedious(面倒)、backtracking(往復)、chores(雑用)、そして「パズルというより間違い探しだ」。数の上では少数派だが、指している対象は positive とほぼ同じだ。私はこの一致を対立として煽らず、同じ設計に対する二つの読みとして扱う。

The Room 4: Old Sins のスクリーンショット: 暗い屋根裏の机上のドールハウスを大型ライトが照らしている暗い屋根裏の机に置かれたドールハウスと、右手からそれを照らす大型のライト(Steam スクリーンショット)

世界観 — ドールハウスという入れ物

positive レビューが最初に褒めるのは、ほぼ例外なくドールハウスそのものだ。「非常によく作られている」「目に心地よい」「部屋どうしが繋がっているのが良い」。さらに複数のレビュアーが Inception(入れ子)という語を持ち出す。屋根裏の机に載った模型を覗き込むと、その中の一室に入り込んでいる——この構造の驚きが、彼らの言葉の中心にある。

negative 側は同じ構造を損失として数える。小さな部屋を行き来する形式になったせいで、前作までの大がかりな機械や舞台が消えたという指摘だ。船の中で船の模型を解く、遺跡を歩く、部屋いっぱいの天体模型を回す——そうした場面と比べれば、キッチンや書斎や庭は凡庸に見える、と。

設計として見れば、これは規模を観察解像度に交換した選択だ。舞台の大きさで驚かせるのをやめ、入れ子の深さで驚かせる方に賭けている。ドールハウスは同時に減算装置でもある。部屋という枠が一度に見える範囲を切り、プレイヤーが抱える情報量を作者が管理できる。前作の広さを愛した人が本作を最弱と呼ぶのは、この交換のレートに納得していないということだ。

The Room 4: Old Sins のスクリーンショット: 庭を備えたチューダー様式のドールハウス全景庭付きのチューダー様式ドールハウスを斜め上から見た全景(Steam スクリーンショット)

メカニクスの言語化

あるレビュアーは、この作品のパズルを「観察と物の操作」の二語で要約している。実際、レビュー群から動詞を拾っていくと驚くほど少ない。見る、そして回す・引く・差し込む。The Room シリーズが一貫して使ってきた語彙で、本作はそれを増やしていない。動詞の減算という点では、シリーズで最も潔い一作だ。

代わりに動いたのは、文法が働く単位である。positive レビューが繰り返し説明するのは「ある部屋で拾った物を、別の部屋で使う」構造だ。七つ前後の部屋が相互に噛み合い、進行は一本道でなくなる。組み合わせ爆発を盤面の広さではなく、部屋の隣接関係で刈り込んでいる、と言い換えられる。

negative 側はこの移設を正確に突く。「常に二つか三つの部屋を並行して進めるので、パズルを解くゲームというより、どの部屋で何を見たかを覚えるゲームになる」。私の読みでは、これは推論から索引への重心移動だ。必要なのは論理を深く辿ることではなく、見たものを頭の中の正しい棚に戻す作業になる。難しさを巡る賛否は、ここから始まっている。

The Room 4: Old Sins のスクリーンショット: 歯車とダイヤルの付いた金属の箱が木の作業台に載っている木の作業台に置かれた、歯車とダイヤルが埋め込まれた金属の箱(Steam スクリーンショット)

難しさの手触り

争点は難しさの量ではなく質だ。positive も negative も、易しいという判定自体では一致している。「詰まった記憶がほとんどない」「時間制限がないので焦らない」「パズルに不慣れな人にも薦められる」。ヒントは段階式で、使っても損がなく、そもそも切ることもできる。詰まりを罰さない設計が、はっきりと選ばれている。

レビュー群の詰まりどころを集めると、三種類に分かれる。仕掛けそのものの論理、見落とした物の探索、そして部屋をまたいだ記憶。一つ目は薄く、二つ目と三つ目が厚い。だから「易しい」と「面倒」が同じ作品について同時に成立する。negative の「間違い探し」「雑用」という語は、難しさの量ではなくこの配分への不満だと読める。

学習曲線の観点では、本作はほとんど上がらない。序盤で覚えた動詞が最後まで同じ手順で通用し、増えるのは部屋の数だけだ。これを緩やかと呼ぶか平坦と呼ぶかで評価は反転する。作者はおそらく「詰まって離れる人を作らない」側に射程を定めた。1〜3 で歯を折られた記憶を宝物にしている層は、その線の外側に置かれている。

The Room 4: Old Sins のスクリーンショット: 黒板の前の机に真鍮の歯車と円環の装置が並ぶ数式と図が描かれた黒板の前の机に並ぶ、真鍮の歯車と円環でできた装置(Steam スクリーンショット)

系譜と位置づけ

本作のレビューには定型がある。四作の順位付けだ。4>1>2>3、4=3>2>1、「四本のうち遊ぶ価値があるのはこれだけ」——helpful 上位にも recent にも同じ形式が並ぶ。単体の出来を語るより、系譜の中の座席を決めることに関心が向いている。

面白いのは、順位を分ける理由が同じ要素だという点だ。The Room Three の広さと終盤の往復を煩わしく感じた人は、本作の縮尺を歓迎して最上位に置く。The Room の、一つの箱を掘り続ける密度を愛した人は、部屋を跨ぐ構成を散漫と見る。同じ設計変更が、前作でどこに躓いたかによって美点と欠点に振り分けられている。

系譜の外から測る声もある。ある negative レビューは RivenOuter Wilds を引いて、「パズルが世界や物語と結びついていない。パズルのためのパズルだ」と書く。仕掛けを開ける快楽そのものを目的にするのか、世界を理解するための手段にするのか。The Room 系列が一貫して前者に賭けてきたことを、この一件は逆側から照らしている。なお、開発元がいくつかの不評レビューに公式に返信しているのも、この欄の風景の一部だ。

The Room 4: Old Sins のスクリーンショット: 桜の襖絵と螺旋階段、入れ子状の木製棚がある緑の壁の部屋桜の襖絵と木の螺旋階段、入れ子状の木製棚が置かれた緑の壁の部屋(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-07-30 時点での Steam ストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。レビュー本文は直接引用せず、典型的な主張を再構成している。

Steam: The Room 4: Old Sins(圧倒的に好評 / Overwhelmingly Positive、全言語 17,927 件中 17,657 件が好評 = 98%。英語レビューは 8,851 件、直近30日は 88 件で 96%)

・helpful 順(全期間)の positive 上位 10 件、negative 上位 10 件、および recent 上位 10 件を読了

SteamDB: The Room 4: Old Sins(リリース日・開発元・ジャンルタグの裏取り)

・専門メディアのレビューは今回参照していない。本記事はユーザーレビュー群の読解に限定している。

結論

Steam の総評は 98% 好評。私の設計批評としての採点は 8.0 だ。この差は評価の対立ではなく、測っている軸の違いだと考えている。98% は「買って後悔しなかった人の比率」であって、パズルとしての手応えの量ではない。実際、その 98% の内側にも「前作ほどの飛躍はない」「価格は少し高い」という留保が同居している。

加点は、動詞を増やさずに部屋の入れ子で新しさを出した設計と、詰まりを罰しないヒントの置き方。減点は、難しさの重心が推論から索引へ寄ったこと、そして部屋を出入りする演出を飛ばせない仕様が、往復の多い構成と噛み合っていないことだ。レビューで言及されるクリア時間は 4〜6 時間に集中している。

向くのは、脱出ゲームの手触りを一人で静かに味わいたい人、シリーズ未経験でどこから入るか迷っている人。向かないのは、1〜3 の大がかりな機械と、解けずに数日置いた記憶を求めている人だ。98% という数字が語っているのは品質の絶対値というより、この作品が誰も拒まないという事実である。

The Room 4: Old Sins のスクリーンショット: レンガ塀の中庭に立つ石造りの東屋と噴水レンガ塀に囲まれた中庭に建つ石造りの東屋と噴水(Steam スクリーンショット)

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