REVIEW · 2025-04-10
The Talos Principle: Reawakened
争点はパズルではなく、それを載せた容器のほうだ
第一印象
Steam のレビューを読み始めて、最初にひっかかったのはここだ。全体では 90% が好評なのに、いちばん多く「参考になった」を集めている一票が否定なのである。しかも早々に投げ出した人ではない。34.4 時間遊んだうえで、薦めないと書いている。
The Talos Principle: Reawakened の公式素材(Steam ストア キーアート)
helpful 順に上位10件を並べると、賛が4件で否が6件になる。票数も否のほうが多い。否定側の最上位が 229 票、肯定側の最上位が 217 票だ(2026-08-22 時点)。全体の集計は 1,069 件中 90% が好評で、ラベルは「非常に好評」。多数決と、いちばん届いている声が食い違っている。
上位10件は賛4・否6に分かれ、票数でも否が上回る(図解・自作)
そこで、否定6件が何に怒っているかを数えてみた。動作の重さが6件、画面の文字が読めないが4件、描画の乱れが4件。価格、新章、エディタと続く。パズルそのものの設計を責めた票は、ひとつもなかった。この記事はそこから始まる。
否定側の不満は容器に集中し、パズルの設計はゼロ件だった(図解・自作)
メカニクスの言語化
先に、どんなゲームなのかを置いておく。廃墟めいた庭園を歩き、閉じた扉の前で道具をいじり、光を通して先へ進む。撃つ場面はなく、仕掛けを読み解くことがそのまま前進になる。2014 年に Croteam が出した作品を、同じ会社が Unreal Engine 5 で作り直したのが今回の版だ。
The Talos Principle: Reawakened のプレイ画面(Steam ストア スクリーンショット)
道具は原作から続く四つである。装置を止めるジャマー、光をつなぐコネクター、自分の動きを記録して働かせるレコーダー、体を持ち上げるファン。数はこれだけだ。面が進むと道具が増えるのではなく、四つの噛み合い方が増える。Puzzlebyrinth の言い方をすれば、動詞を絞って組み合わせを伸ばすやり方の見本になっている。
道具は四つだけで、増えるのはその組み合わせのほう(図解・自作)
今回の版で足されたものに、巻き戻しと一時停止がある。レコーダーの面は、記録した自分と噛み合わなければ最初からやり直しだった。肯定側はここを繰り返し褒める。「これだけで買う価値がある」という言い方まで出てくる。後始末が数分から数十秒に縮めば、試す回数を増やせる。解き口が変わるわけではないが、詰まったときに手を動かし続けられる。つまり彼らは、やり直しの値段の話をしているのだ。
やり直しにかかる時間が、数分から数十秒に縮む(図解・自作)
同じ機能を、否定側は特に責めていない。彼らが責めるのは画面のほうである。草も反射も増え、遠くの装置は輪郭がぼける。「仕掛けが前ほど目立たない」という声が並ぶ。これは好みの話ではない。盤面が読めるかどうかという、観察の解像度の話だ。
映像の情報量が増えると、盤面の目印は埋もれやすくなる(図解・自作)
難しさの手触り
新しく加わった章は「In the Beginning」という。3つの世界に6面ずつ、あわせて18面だ。掲示板では「4〜5時間」という報告に対し、「もっとかかった」という書き込みが並ぶ。数は少ないのに、賛否が最も割れているのがこの18面である。
新章は3世界×6面の18面という構成(図解・自作)
レビューを読み分けると、詰まり方は三種類に分かれる。道具の組み合わせが見えないとき。記録した自分との重ね方が読めないとき。そして、画面が読めなくて手が止まるとき。前の二つは設計の内側にある。三つ目だけが外にある。三つ目を難しさに数えると、この作品の評価は実際より低く出てしまう。
三つの詰まり方のうち、三つ目だけが設計の外にある(図解・自作)
遊んだ時間も見ておく。上位10件では、賛の中央値が 66.2 時間、否の中央値が 23.4 時間だった。賛のほうが二倍以上長い。ただし否の 23.4 時間も、本編の目安とされる 13 時間は越えている。早々に見限った票ではない、ということだ。
賛のほうが長いが、否も本編の目安は越えている(図解・自作)
系譜と位置づけ
この版が置かれている場所は、少し変わっている。2014 年の The Talos Principle が、今も同じ店で売られているのだ。旧作は 17,107 件中 95% が好評で、定価は 29.99 ドル。今回は 1,069 件中 90% で、定価 39.99 ドル。レビューでは、旧作がセールで 4.5 ドル前後まで下がることも繰り返し引かれる。
同じ設計が、二つの容器で並んで売られている(図解・自作)
数字は、どの器で測るかで動く。OpenCritic は 88 点で、30 本中 97% が推奨。Metacritic の批評家欄は 89 点(14 本)だ。ところが同じ Metacritic のユーザー欄は 6.8(93 人)。Steam の 90% は批評家寄りに出ている。母数も、書く動機も違うのだから当然ではある。ただ、6.8 という数字が何を測ったのかは覚えておきたい。
器を変えると、同じ作品の数字が大きく動く(図解・自作)
シリーズの並びで見ると、今回は前に進んだ一本ではない。横に増えた一本である。本編、拡張、続編、そして作り直し。2026 年 5 月には、締めくくりとして 3 作目が発表された。この版の役目は、そこへ向かう前に一作目をもう一度置き直すことだったのだろう。
今回の版は前進ではなく、横に増えた一本(図解・自作)
参照したレビュー群
本記事は 2026-08-22 時点の Steam ストアページのユーザーレビュー群と、公式の告知や集計サイトを読んで書いた。レビュー本文の直接引用はせず、繰り返し出てくる主張を再構成している。
・Steam: The Talos Principle: Reawakened(全レビュー 1,069 件中 90% が好評・「非常に好評」/直近30日は 37 件中 86%)
・helpful 順の上位10件(賛4・否6)を全文読了。加えて新着順の一覧と、新章の長さを話し合う掲示板の書き込みを読んだ
・比較対象として 2014 年版のストアページ(17,107 件中 95%・定価 29.99 ドル)を確認した
・批評家の集計は OpenCritic(88 点・30 本・97% が推奨)と Metacritic(PC 版 89 点・14 本/ユーザー 6.8・93 人)に拠る
・携帯機での動作については Steam Deck HQ のレビューを、クリア時間の目安は 集計サイトの数値(本編 約13時間・完全収集 約34時間)を参照した
・画像について。1枚目のキーアートと本文中のスクリーンショットは Steam ストアページで実在を確認した公式素材だが、今回の実行環境からは画像CDNに到達できず、内容を目視できなかった。そのためキャプションは作品名と素材種別だけの汎用表記に留めている。残り 13 枚は本記事のために私が描いた図解で、こちらは日本語版・英語版とも 1 枚ずつ目視で確認した
結論
点の付け方を分けておく。設計そのものは 2014 年のままで、私はここに 9.0 を置く。そこから容器の分を引く。動作の重さ、文字の読みにくさ、そして旧作と並んでいるのに高い価格。引いて 8.4 になった。Steam の 90% とほぼ同じ位置だが、理由の内訳は違う。
設計に付けた点から、容器の分を引いて 8.4 とした(図解・自作)
どちらを買うかは、二つの質問で決まる。原作を遊んだかどうかと、機材に余裕があるかどうかだ。原作が初めてで機材に余裕がないなら、旧作のほうが安全である。原作を遊んでいて余裕があるなら、新章18面とエディタの分だけ価値がある。どの答えも、パズルの出来を疑ってはいない。それがこの作品の評判のいちばん正直なところだ。
二つの質問で、どちらを買うかが決まる(図解・自作)
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