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ESSAY · 2026-05-08

観察を遊びにする — Witness, Obra Dinn, Lorelei の共通文法

気づきが報酬になる設計

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はじめに

アクションゲームの動詞は『撃つ』『跳ぶ』。パズルゲームの動詞は『押す』『置く』。けれどこの記事で扱う3作品の動詞は、もっと珍しい。『見る』だ。

The Witness(2016)、Return of the Obra Dinn(2018)、Lorelei and the Laser Eyes(2024)。10年弱の間に、観察そのものをプレイ動作にしたゲームがインディーから連続して出てきた。私はこの3作品に、共通の設計文法があると考えている。

Witness — 文法の発見

Jonathan Blow の The Witness は、500を超えるパネルに線を引くゲームだ。けれどパズルは線そのものではなく、各エリアで増えていく記号の文法にある。プレイヤーは説明を受けないまま、パネルの並びだけで新しいルールを学ぶ。

中盤以降、プレイヤーは島の外側にもパネルを見始める。木漏れ日が線になる。雲の輪郭が記号になる。観察の解像度が上がっていく。これは『見ることそのものが進行』というデザインの最初の到達点だ。

Obra Dinn — 凍結された一瞬

Lucas Pope の Return of the Obra Dinn は、観察の対象を『動いている世界』ではなく『凍結された一瞬』に変えた。60人の死の瞬間が、それぞれ立体的な絵として保存されていて、プレイヤーは中を歩き回って観察する。

Witness が『見続けることで気づく』なら、Obra Dinn は『見回ることで気づく』だ。なまり、服の柄、立ち位置、武器。観察の単位が増え、複合推理が立ち上がる。

重要なのは、3人正解で確定するという判定設計だ。これがなければ、確信のない推理が前進感を失う。設計の判断の妙が、こんな小さな仕組みに宿っている。

Lorelei — 観察と暗号の融合

2024年の Lorelei and the Laser Eyes は、Witness と Obra Dinn の文法を引き継ぎつつ、暗号という古典的な要素を融合した。観察対象が『絵画の年号』『止まった時計』『ローマ数字の柱』に拡張されている。

Simogo は、観察を遊びにするだけでは新しさが足りないと判断したのだろう。観察結果を紙のノートに転記し、別の場所で組み合わせる、というフィジカルな工程を意図的に残した。これは10年前の Witness には無かった層だ。

共通文法

3作品に共通するのは、(1)『見たもの』が直接ゲームの状態を変える、(2)プレイヤーの知識ベースだけが進行の鍵になる、(3)観察解像度が上がるほど世界が広がる、という3点だ。

もし観察パズルを作るなら、この3点を全て満たしている必要がある、と私は感じている。どれか一つでも欠けると、観察は『ただのチュートリアル』になってしまう。

参考リンク

本記事で言及した作品の一次資料:

Steam: The Witness (2016, Jonathan Blow)

Steam: Return of the Obra Dinn (2018, Lucas Pope)

Steam: Lorelei and the Laser Eyes (2024, Simogo)

Wikipedia: Jonathan Blow

Wikipedia: Lucas Pope

Wikipedia: Simogo

まとめ

観察を遊びにする系譜は、まだ若い。10年で3作品しか出ていない。これからインディーがこの土俵で挑むなら、Witness と Obra Dinn と Lorelei を全部研究するのが近道だ。

私が作るとしたら、観察の単位を『時間の流れ』に拡張してみたい。Obra Dinn が空間で観察を切り取ったように、時間軸で観察を切り取れるはずだ。

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