第8編 · 作り手編 — 設計者の哲学
第19章
引き算と手触りの人たち
11本
仕組みを足さないという仕組み、一回のスワイプに何年ぶんの深さを仕込む、正解を解いた人のものにする。プレイヤーの側に立つ設計者たち。
この章の記事
- 1.高橋慶太 の哲学 — 仕組みを足さないという仕組み2026-08-22 · Kizuki · 約29分
『塊魂』の高橋慶太を、本人の発言だけから読む。2025年末、彼は新作『to a T』が「売れなかった」と自分から言い、家族と日本に戻った。だが2009年の時点で、彼はもう「自分は業界に向いていない」と語っていた。向いていないと言った人が、そこから十六年作り続けたのはなぜか。二十年ぶんの発言を並べて追いかける。
- 2.上田文人の哲学 — 引き算で、感情の余白をつくる2026-07-09 · Kizuki · 約13分
『ICO』『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』の上田文人を、本人のインタビュー4本から読み解く。「引き算のデザイン」という一言で片づけられがちなこの人物が、実際に何を削り、何を残そうとしてきたのか。哲学・こだわり・失敗談・ジレンマ・影響源を、本人の発言だけを根拠にたどる。
- 3.Asher Vollmer の哲学 — 一回のスワイプに、何年ぶんの深さを仕込む2026-07-26 · Kizuki · 約17分
『Threes!』を作った Asher Vollmer を、本人の発言だけを頼りに考察する。「簡単に学べて極めるのは不可能」を何年ももたせる長寿設計、仮アートを美しく保つこだわり、クローン事件で「無料にしなかった自分は間抜けだ」と自責し立ち直るまで、そして効率と休息のジレンマ。最後に Kizuki の解釈で締める。
- 4.Zach Gage の哲学 — 知っている遊びを、作り替える2026-07-07 · Kizuki · 約16分
『SpellTower』『Really Bad Chess』『Good Sudoku』『Puzzmo』の Zach Gage を、本人インタビューだけを根拠に考察する。誰もが知る定番を作り替える設計思想、グラフィックデザイン由来の「三つの視線」と手で触るプロトタイプ、嫌いなジャンルへ飛び込む癖、無限の関与を拒む倫理と確率の扱い、そして母の新聞・Spelunky・反面教師 Sid Meier という影響源まで。最後に、彼を「画廊を出た概念芸術家」と読む私見を一段落だけ添える。
- 5.Scott Kim の哲学 — 正解を、解いた人のものにする2026-08-03 · Kizuki · 約20分
アンビグラムの作者にして『Bejeweled 2』のパズルモード設計者、Scott Kim を、本人が書き語ったものだけから考察する。「パズルは楽しい、そして正解がある」という二行の定義の非対称性。「良いパズルを作るには、まず良い玩具を作れ」「プレイヤーが挑むのはパズルであって操作系ではない」という設計規範。数学教育で繰り返し味わってきた敗北と、「棒より人参」という転換。孤独なパズルに競争の興奮をどう戻すかという本人明記のジレンマ。最後に Kizuki の解釈で締める。
- 6.マーティン・ガードナーの哲学 — 知らないことを、読者への配慮に変える2026-09-07 · Kizuki · 約14分
数学の学位を持たない哲学科卒のライターが、25年間パズルの連載を書き、ペントミノからライフゲームまでを世界に広めた。本人は「私は徹底してジャーナリストだ」と言い続けた。インタビュー・自伝を横断して、マーティン・ガードナーの哲学・こだわり・後悔・ジレンマ・影響源を読む。
- 7.Kim Swift の哲学 — プレイヤーを、賢く感じさせるために操る2026-07-12 · Kizuki · 約17分
「遊んだ後、プレイヤーに賢いと感じてほしい」——Kim Swift は『Portal』の設計をこう語る。パズルの難所ではなく、プレイヤーの視線と気持ちを気づかせずに操る「見えない誘導」に賭けた設計者だ。その哲学・こだわり・失敗談(ボス戦の三度の死)・ジレンマ・影響源を、本人のインタビューと GDC ポストモーテムから読み解く。
- 8.Dave Grossman の哲学 — 賢いのは、プレイヤーの側でいい2026-09-03 · Kizuki · 約17分
「あなたの仕事は自分が賢いと感じることではない。プレイヤーが賢いと感じられるようにすることだ」。Dave Grossman は30年これを言い続け、標語で終わらせず、自分の義母を座らせて自作を遊ばせ、詰まった箇所を全部公開した。本人の寄稿とインタビュー7点を横断して、哲学・こだわり・失敗・ジレンマ・影響源を読む。
- 9.Ron Gilbert の哲学 — プレイヤーの時間を、無駄にしない2026-07-11 · Kizuki · 約11分
「ほとんどのゲームが難しいのは、パズルが恣意的で、互いに繋がっていないからだ」——Ron Gilbert は1989年、『Monkey Island』を設計しながらこう書いた。アドベンチャーゲームのパズル設計を語らせたら右に出る者のいない彼の哲学・こだわり(パズル依存チャート)・失敗談(『Maniac Mansion』)・ジレンマ・影響源を、本人のエッセイ・ブログ・インタビューから読み解く。
- 10.Ken Wong の哲学 — 画面一枚に世界を閉じ込める2026-08-04 · Kizuki · 約19分
『Monument Valley』のリードデザイナーであり、『Florence』の作者でもある Ken Wong を、本人が公に語った発言だけから考察する。作業の「70, 80, 90 パーセント」を捨てる前提で始めたという制作方針。パズルに必要な情報を画面の外に出さない「little worlds」の原則。錯視を手品として組む態度。音楽の方向性を議論する語彙がチームになかったという告白と、『Florence』開発中の「他人の金を無駄にしているのでは」という不安。表象をめぐって自分で引いた線。そして自作を「パズルゲームではない」と言い直した2019年の発言。最後に Kizuki の解釈で締める。
- 11.岩谷徹の哲学 — 迷路を、迷路に見せない2026-08-21 · Kizuki · 約19分
『パックマン』(1980)の企画者・岩谷徹を、本人の講演とインタビューだけから考察する。彼は迷路のゲームを作りながら、迷路の壁を「輪郭線だけ」にして目立たなくした。「足し算ではなく引き算で考える」と言い、1986年にも2015年にも同じ難易度論を語り、そして2011年には「iPhone の単純なゲームの氾濫」を批判した。単純さの極北を作った人が単純さを叱る——この矛盾に見えるものを、番茶を淹れ直しながら並べ直す。