SOUNDTRACK · 2026-09-08
Minit のサウンドトラック — 60秒に合わせるため、静けさを手放した音
Jukio Kallio
はじめに — 静けさを手放してから、音は動き出した
『Minit』は、Devolver Digital が2018年に発売したアクションアドベンチャーである(Komugi のレビュー、難易度「易」、想定クリア時間4時間)。呪われた剣を拾った瞬間から、主人公は60秒ごとに死んで振り出しに戻る。持ち物とプレイヤー自身の記憶だけを引き継いで、また60秒を生き直す。
タイトル画面で最初に鳴るのは、白黒2色のグラフィックによく似た、乾いた8ビット風の旋律だ。BPMはだいたい140前後だろうか、休符が少なく、前へ前へと歩かせる音でできている。曲を書いたのはフィンランド出身の作曲家 Jukio Kallio(ユキオ・カリオ)。開発チーム4人(Jan Willem Nijman・Kitty Calis・Jukio Kallio・Dominik Johann)の一人でもある(英語版Wikipedia、2026-09時点)。
Minit(Steam ストアページより)
60秒という制限は、曲づくりの何を変えたのか?
Kallio は Bandcamp Daily の取材に、当初は静かでアンビエントな曲を思い描いていたと語っている。だが「タイトなタイムリミットがゲームプレイに織り込まれていると、それでは間に合わない」と気づき、方針をまるごと書き直した(Bandcamp Daily、2018-05-16)。
私はこの言い換えに時間を使いたい。アンビエントは「待たせる」音楽だ。聴き手のテンポに合わせて、ゆっくり形を変えていく。だが Minit は待ってくれない。60秒経てば強制的に死んで、また最初の一歩からになる。曲の側が、プレイヤーより先に動き出していないといけない。
結果として鳴るのは、粗くローファイな質感を残したまま、休符を切り詰めた曲だ。Kallio 自身「生でローファイな音が単純に好きだ」とも語っている(同取材)。技術的な制約から始まった好みが、ここでは60秒という別の制約と噛み合っている。
Minit(Steam ストアページより)
焦りのテンポと、曲のループはどう釣り合っているのか?
Minit のプレイは、走って、拾って、死んで、また走る、の繰り返しだ。この「解いては戻る」テンポに、Kallio は前のめりな短いループを当てた。ループが短いから、死んでもすぐに曲頭近くへ戻れる。焦りを曲の暗さで表現せず、テンポの速さで表現する――以前『La-Mulana』の稿でも触れた選択と同じ発想を、Kallio はまったく違う手つきでやってのけている。
対照的なのは『Baba Is You』のループだ。あちらは試行錯誤を「叱らない」ために音を柔らかくした。Minit は逆に、焦りを「隠さない」ために音を尖らせている。同じ「死んでやり直す」設計でも、音の答え方はここまで違う。
聴くべきトラック
公式音源は Jukio Kallio 自身の YouTube チャンネルと Bandcamp で公開されている『MINIT OST』(全22曲)。
・[Official] MINIT OST ↗ — 作曲者本人のチャンネルで公開されているフルアルバム。タイトル曲からジュークボックス収録曲まで通して聴ける。
「[Official] MINIT OST」(Jukio Kallio, YouTube)のサムネイルより
・Sabasaba Desert ↗ — 探索エリアのテーマ。休符を削ったまま、歩く速さに音数を合わせている。
・Sharp Business ↗ — 剣を研いでもらう店のテーマ。せわしない用事の合間に流れる、短く実務的な一曲。
おわりに — 私が盗むなら
私が盗むなら、ここだ。持ち時間が短いゲームでは、静けさより先に「動き出す音」を選ぶ。アンビエントへの未練は、いったん脇に置く勇気がいる。
もう一つ。一つの主題を、衣装だけ替えて何度も鳴らすのは、手を抜くこととは違う。ジュークボックスのように、同じ骨格を9つの部屋に置き直せば、見つかるたびに驚きが増える。曲を量産する近道ではなく、遊びを増やす近道として使いたい手だ。今夜はハンドドリップの合間に、あの9着の「同じ曲」を聴き直そうと思う。
参考リンク
・Steam: Minit(Devolver Digital 公式ストアページ)
・Jukio Kallio — MINIT OST(公式 Bandcamp)
・Bandcamp Daily: High Scores — Jukio Kallio's "Minit" Soundtrack Embraces Lo-Fi Sounds(2018-05-16)
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