SOUNDTRACK · 2026-10-05
Rusty Lake: Roots のサウンドトラック — 旋律は同じまま、楽器だけが別の人生を語る
Victor Butzelaar
はじめに — 家系図が伸びるたびに、別の楽器が鳴る
Rusty Lake: Roots(2016)は、ある一族の人生を順にたどるパズルだ。レビューにもあるとおり、家系図が育つのがこの作品の背骨である。
音楽を書いたのは Victor Butzelaar。Rusty Lake の公式ブログによれば、Hotel 以降のサウンドトラックは、彼が Rusty Lake の依頼で書いている。
Bandcamp のアルバムは16曲、公開は2016年10月22日。曲名を眺めるだけで編成の幅が見える。ピアノ、ヴィブラフォン、マリンバ、弦、トロンボーン、ファゴット、ハープ、グロッケン。
ざっくり言えば、ひとつの楽器が主役になる曲がいくつも並ぶ盤だ。BPM は耳測りでだいたいゆったりしている。
Rusty Lake: Roots のスクリーンショット(Steam ストアページより)
体験とのリンク — 章ごとに「テーマ曲」と「変奏」がある
Rusty Lake の公式ブログは、Roots の音楽をこう説明している。「各レベルに専用のテーマ曲があり、変奏がある」。(原文は英語。要旨を私が訳した)
Wikipedia によると、Roots は3世代の一族を、33の短い場面で描く。つまり、短い場面ごとに専用の曲が付く作りだ。
ここが面白い。パズルは短く、見る風景も部屋ひとつだけ。だから曲の側が、場面ごとの顔つきを引き受けている。
ただし、どの場面にどの曲が付くかの一覧は、私は確認できていない。ここから先は、曲名と編成から見た私の読みだと思ってほしい。
ピアノだけの曲、ヴィブラフォンの主題、マリンバの主題。同じ旋律の骨を、楽器だけ替えて並べているように聞こえる。一族の「同じ血で、別の人生」という筋書きと、構造がよく似ている。
持ち帰れる設計 — 旋律は変えず、楽器の「顔」だけ替える
曲作りに持ち帰れる点を、先に書いておく。短い場面が続くゲームでは、毎回ゼロから曲を作らなくていい。
旋律の骨を共通にして、楽器を替える。聴いた人は「あの家の曲だ」と思い出し、同時に「今回は別の人だ」と感じる。
私が気になるのは、ループの終わり方だ。短い場面は、リトライも早い。同じ曲が何度も流れる前提で、頭が飽きない音色を選ぶことになる。
ピアノやマリンバのように減衰のはっきりした音は、ループの継ぎ目が目立ちにくい。(これは私の経験則で、制作者の発言ではない)
パズルとのアナロジー — 数分で解ける場面と、数分の曲
このゲームの場面は短い。解くテンポは、ひと呼吸ぶんの試行錯誤で終わる。
長考に沈黙が合うゲームもある。Roots は逆で、手を動かすたびに音が背中を押す。ドラッグして、はまって、次の場面へ。
曲の長さも、そのリズムに合っている。数分でひと区切りがつく曲は、場面の寿命と同じ呼吸をする。
家系図が育つほど、聴いた曲が増える。曲の数が、遊んだ時間の「地図」になる。
Rusty Lake: Roots のスクリーンショット(Steam ストアページより)
聴くべきトラック
公式音源として確認できたのは、配信音源の自動生成チャンネル(Victor Butzelaar - Topic)の一曲だ。
「Rusty Lake Family Tune」。アルバムの最後に置かれた曲で、一族の曲として知られている。
アルバム全体は、作曲者の Bandcamp で試聴できる。ピアノ独奏の曲から先に聴くと、編成の幅がつかみやすい。
おわりに — 私が盗むなら
私が盗むのは、「骨を残して、楽器を替える」やり方だ。短い場面が続く曲作りなら、すぐ試せる。
まずピアノで8小節の旋律を書く。同じ旋律を、マリンバとヴィブラフォンに渡してみる。
音色を替えただけで、別の人の曲になるかどうかを聴く。ならなければ、旋律の骨がまだ重い。
聴き直すなら、同じ旋律が楽器を替えて返ってくる瞬間を探してほしい。関連作品は Rusty Lake Hotel だ。同じ作曲者の音が、もっと狭い部屋で鳴っている。
参考リンク
・Victor Butzelaar Bandcamp: Rusty Lake Roots Soundtrack
・Rusty Lake Blog: Soundtrack of Rusty Lake: Roots
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