DESIGN-ROUNDUP · 2026-07-30
同じ仕掛けが、鍵ひとつで別ゲームになる——Alan Hazelden が読む『Every Door a Portal』と自作『Fort Locks』
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年7月30日
はじめに
今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。題材は英語圏の専門メディア Thinky Games に掲載された『Thinky Third Thursday』7月号(著者 Alan Hazelden、2026年7月17日公開)で、私はこれを原文で通読した。
私は今日も相変わらず、デザイナーに憧れる割にパズルを自分で解くのは苦手なままだ。それでも、同じ核となる仕掛けを共有する二つのゲームが、たった二つの選択の違いだけでまったく別の手触りに分かれていく様子には、静かに感心させられた。
「くぐった鍵が現実を書き換える」——Alan Hazelden が語る自作とジャム作品の分岐点
『Thinky Third Thursday』は、パズル系スタジオ・パブリッシャー Draknek & Friends を率いる Alan Hazelden 本人が毎月執筆するコラムで、Thinky Games 上に掲載されている。Hazelden は『A Monster's Expedition』『Cosmic Express』『A Good Snowman is Hard to Build』などで知られるパズルデザイナーだ(Puzzlebyrinth では以前、本人の発言をもとにした「designer-hazelden」記事でその設計哲学を扱ったことがある。関連記事 ↗)。7月号で Hazelden は、Dom Camus が主催する年次ジャム Thinky Puzzle Game Jam 6(テーマ「Locked Room」、応募80件超)からのお気に入りを紹介している。原文 ↗
その中の一本が、Hazelden 自身が発案した『All the Gold in Fort Locks』(Lucas Le Slo・Benjamin Davis・Murray Somerwolff との共作)だ。ドアを開ける「魔法の力」を使い、城塞 Fort Locks の金をすべて盗み出す、というのが概要である。
Hazelden はこれと並べて、同じジャムの参加作『Every Door a Portal』(by ELAiNE)を取り上げ、両者の仕組みを本人自ら比較している。どちらのゲームも、「くぐった鍵によってドアの向こうにある現実が書き換わる」という核となる仕掛けを共有している。しかし ELAiNE の作品は鍵をインベントリに便利に保持できるのに対し、Hazelden 自身の作品は鍵を物理的に押して運ばなければならない。さらに ELAiNE の作品はパズルを11本の独立したスタンドアロンのレベルに分けているのに対し、Hazelden の作品は一つの相互接続した挑戦としてまとめられている、と本人は書いている。
Hazelden はこの対比を「似たようなゲームのアイデアが、いかにすばやく分岐し、まったく別の体験になり得るかを示す好例(a great example of how similar game ideas can diverge and very quickly become totally different experiences)」と評している。なぜ重要か: 一つの核となる仕掛けに、鍵の持ち方(インベントリか、押して運ぶ物理オブジェクトか)とレベル構成(独立した複数面か、一つの相互接続マップか)という二つの副次的な選択を掛け合わせるだけで、体験がここまで変わり得る、という点を、他ならぬデザイナー本人が自作とジャム作品を並べて言語化しているのが読みどころだ。ジャムという短期間・単一テーマの制約下だからこそ、こうした分岐が観察しやすくなっているとも読める。
なお同じ号では、Draknek & Friends 公式ポッドキャストの最新回で、Ausiàs Dalmau Roig(『Is This Seat Taken?』開発者)を迎え「複数の解を持つパズルの設計」が話題になったとも触れられている。ただし本文中でその内容までは踏み込んで書かれていないため、今日はここで留めておく。
今日の気になった一文
"A great example of how similar game ideas can diverge and very quickly become totally different experiences!"
(日本語訳:「似たようなゲームのアイデアが、いかにすばやく分岐し、まったく別の体験になり得るかを示す好例だ」——Alan Hazelden)
参考リンク
本日扱った記事:
・Alan Hazelden's Thinky Third Thursday — July 2026(Alan Hazelden、Thinky Games、2026年7月17日)
おわりに
今日はデザイナー本人が、自作とジャム参加作を並べて「なぜ違う体験になったか」を言葉にしてくれる記事だった。同じ仕掛けから出発しても、持ち方一つ、面の構成一つで別のゲームになる——私はまだパズルを解くのは苦手なままだが、この「分岐点」を自分の目で見つけられるようになりたいと思う。明日もまた、世界のどこかの設計議論を探しに行く。
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