REVIEW · 2021-05-20
Lacuna – A Sci-Fi Noir Adventure
雨と煙のサイエンスフィクション探偵劇
第一印象
Steam の評価は 2,978 件中 2,731 件が好評だ。positive が最初に挙げるのは、ピクセルアートの雰囲気と、音楽、サイエンスフィクションの世界観である。雨と煙の街を歩く、古典的な探偵ものの手触りが好まれている。
同じ画面を見て、否定的なレビューは「ピクセルが作品を引き立てていない」「物語がありきたりだ」と書く。つまり、見た目への反応は割れている。ただし割れ方は穏やかで、褒める側が圧倒的に多い。
もう一つ目立つのは、タグへの期待のズレだ。「探偵ゲームだが、期待した種類の探偵ゲームではない」という書き出しが、肯定にも否定にも出てくる。
Lacuna のプレイ画面(Steam スクリーンショット)
メカニクスの言語化
レビューを読むと、動詞は「歩く」「会話する」「手がかりを調べる」「選ぶ」に絞られている。positive の一部は「手がかりに注意を払うことが大切」と書く。一方で、「推理というより、選択肢つきのビジュアルノベルに近い」という読みも多い。
Puzzlebyrinth の語彙でいえば、これは観察と推理を前面に出すのではなく、物語の分岐を動詞にした作品だ。「探偵機構は軽い」と受け取る人にとっては物足りない。分岐を楽しむ人にとっては、選択がそのまま推理の代わりになる。
negative 側が繰り返すのは「道を急ぐだけ」「電話に出て、会話して、書類を渡す」という退屈さだ。動詞が少ないことを、美点にも単調さにも読める。ここでは動詞の減算が、観察の解像度を上げる方向には働いていない。
仕掛けに向き合う場面の一つ(Steam スクリーンショット)
系譜と位置づけ
比較される作品は、同じ開発元の過去作と、ほかの探偵ゲームだ。「同じ開発元の作品と同じ弱点がある」という指摘が複数あった。スキップできない場面や、手動で読み込めないセーブが挙がる。
推理を主役にしたReturn of the Obra Dinnのような作品と比べると、この作品は物語の運び方に重心がある。Her Storyが記録を調べる行為そのものを遊びにしたのと違い、ここでは調べる行為は物語への入り口として扱われる。
私の読みでは、この作品の射程は「サイエンスフィクションの政治劇を、ゆっくり味わいたい人」にある。推理の手応えを求める人には、期待の置き場所が違う。
Lacuna のプレイ画面(Steam スクリーンショット)
難しさの手触り
難しさは、ほとんどのレビューで「普通」か「易しい」と書かれる。詰まったという声は少ない。代わりに語られるのは、手間の重さである。
最も票を集めた否定の一つは、複数の結末を見るために何周もしなければならない点だ。手動でセーブできず、場面もスキップできないため、実績の収集は苦行になる。「8周目」「9周目」という具体的な数字が、複数のレビューに現れた。
もう一つは、選択の結果が分かりにくいことだ。「間違った選択のせいで、詰む状況に押し込まれた」と書く人がいる。手がかりが足りないまま重い結果を引く場合、それは難しさではなく、不親切として受け止められる。
Lacuna のプレイ画面(Steam スクリーンショット)
参照したレビュー群
本記事は 2026-10-01 時点での Steam ストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。
・Steam: Lacuna – A Sci-Fi Noir Adventure(Overall 2,731/2,978 positive(約 92%)、非常に好評)
・appreviews API から取得できた直近1年の positive・negative 各 20 件の先頭部分を読んだ。取得経路の都合で全文の精読ではなく、引用せずに典型主張の再構成として書いている
・中国語・ロシア語・スペイン語などのレビューが多く、先頭の抜粋のみで細部の確認はできていない
結論
Steam の overall は約 92% positive(2,978件中 2,731件、2026-10-01 snapshot)。私の設計批評としての採点は 7.0 だ。数字より低いのは、推理の動詞が薄く、物語の分岐に寄りかかっているためだ。
レビュー群の落としどころは「雰囲気のいい探偵劇として遊ぶなら良い。推理の手応えは期待しない」だ。結末の数は多いが、実績集めのための繰り返しはつらい、という注意も共通している。
この作品の価値は、何を探偵ゲームに求めて入るかでほぼ決まる。ピクセルアートと音楽、政治劇の筋書きを味わう人には薦められる。手がかりを自分で組み立てたい人は、射程の外にいる。
Lacuna のプレイ画面(Steam スクリーンショット)
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