SOUNDTRACK · 2026-09-30

Hue のサウンドトラック — 色を替えても、旋律は替えない

Alkis Livathinos

はじめに — 背景の色が変わると、曲も表情を変える

Hue(2016, Fiddlesticks)の音楽は、ほぼピアノ一台の静かな曲でできている。作曲は Alkis Livathinos。ロンドンで活動していた独学のフリーランスだ。

ゲームの主役は「色」である。色を選ぶと背景がその色に染まり、同じ色の障害物が景色に溶けて消える。そこに流れるのは、電子音の派手な曲ではなく、内省的なピアノ曲だ。私は黒コーヒーを淹れ、この「静けさの選び方」を分解してみたい。

パズル固有の設計 — 主題は変えず、下の和音だけを替える

Hue は、色を切り替えるたびに世界の見え方が変わるパズルだ。しかも Pocket Gamer はチェックポイントの無さを弱点として挙げている。やり直しが軽くない場面で曲が毎回別物になったら、考えは途切れてしまう。

Livathinos は Kotaku にこう語っている。「主題をただ弾くだけでも、下のコードを変えると、ぐっと感情的になる」。旋律を動かさず、和音だけを替える。これは色を替えても部屋の形は変わらない、というパズルの構造と同じ発想だ。

エリアごとに専用の曲がつく、と複数の評でも言われている(The Hidden Levels など)。ただし各曲は同じピアノの質感でそろえられ、「別のゲームに来た」感じにはならない。

パズルとのアナロジー — 色を選ぶ間の、伸びる時間

私は何でも BPM で測る癖があるが、Hue のピアノは拍を数えさせない。あくまで耳測りだが、ゆったりした歩みで、テンポより「間」が主役に聞こえる。

色の輪を回して「どの色を消すか」を考える時間は、プレイヤーごとにばらばらだ。だから曲は急かさない。拍が前へ押さない分、考えているあいだの空白がそのまま音楽の一部になる。

聴くべきトラック

まずはメインテーマ "Dearest Hue (Hue Main Theme)"。公式配信の音源(YouTube の「Alkis Livathinos - Topic」チャンネル)だ。ピアノの主題が、どこまで単純な形で立っているかを聴いてほしい。

アルバム全体(29曲)は作曲者の Bandcamp で聴ける。曲名にも色の気配がある。"Impossible Colours"(あり得ない色)、"Civilisations Lost"、"Elysian" などから聴き始めるのもいい: Hue Official Soundtrack(Bandcamp) ↗

おわりに — 自分が作るなら盗む点

私が曲を作る側として盗むなら、「主題を固定して、和音だけを替える」ことだ。場面ごとに別の曲を書く前に、同じ旋律に違う和声を敷いてみる。プレイヤーは「同じ世界の別の顔」として受け取ってくれる。

もう一つは、電子音に逃げなかった潔さ。Livathinos は『Machinarium』(Tomáš Dvořák)に、チップチューン以外の道を教わったと語っている。その Machinarium は私の別記事 Machinarium のサウンドトラック で分解した。作品本体のレビューは Hue のレビュー にある。今夜はもう一杯コーヒーを淹れて、色を一つ消してから、ピアノを聴き直すことにする。

参考リンク

・Alkis Livathinos: Hue Official Soundtrack (Bandcamp)

・Steam: Hue Official Soundtrack

・Kotaku: The Story Behind Hue's Brilliant Soundtrack

・Black Screen Records: Hue (Official Soundtrack)

・Wikipedia: Hue (video game)

・Steam: Hue

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