SOUNDTRACK · 2026-10-01
Planet of Lana のサウンドトラック — 台詞のない旅で、旋律が語り手になる
Takeshi Furukawa
はじめに — 台詞のない世界で、旋律が語り手になる
Planet of Lana(2023, Wishfully)の音楽は、台詞のない物語の語り手を一本の旋律に任せた設計だ。作曲は Takeshi Furukawa。『The Last Guardian』を手がけた人物として知られるが、この作品には自分から売り込んだ。
遊ぶのは少女 Lana と、不思議な生き物 Mui。さらわれた妹 Elo を追って、荒れた星を進む。完成度の高い2Dアドベンチャーで、パズルは軽め。当サイトの Komugi のレビューでも難易度は「易」だ(Planet of Lana のレビュー)。だからこそ、音楽が感情を運ぶ比重が大きい。私は黒コーヒーを淹れて、その仕組みを分解してみる。
Planet of Lana のプレイ画面(Steam ストアページ掲載)
体験との隠れたリンク — 自分から届いた1通のメール
きっかけが珍しい。GamesRadar によると、共同創設者の Klas Martin Eriksson は「Takeshi Furukawa が、ゲームの1枚の画像を見て、突然メールをくれた」と話している。本人にとっても、自分から売り込むのは初めてだったという。
Eriksson は「音楽は物語でもかなり重要な役割を果たす」とも語る(詳細は伏せられた)。開発側は最初から、台詞を使わない物語を考えていた。体の動きと音で気持ちを伝える作りだ。そこに、絵を見ただけで曲が浮かんだ作曲家が合流した。
Laced Records のインタビューによれば、進め方は「見せて、語らない」。共同監督の2人がプレイ映像を渡し、Furukawa がそれに合わせて曲を書いた。映画のように「ここで曲を入れる、ここは効果音に任せる」と置き場所を決めていったそうだ。
パズル固有の設計 — 初心者が弾ける主題と、繰り返しの緊張
このサントラの最大の特徴は、主題の分かりやすさだ。WSHU の番組で Furukawa は、旋律を「ピアノを習いはじめた娘でも弾ける」くらい単純にしたかった、と話している。
Laced Records では、ジョン・ウィリアムズやジェリー・ゴールドスミス、ジェームズ・ホーナーといった映画音楽の旋律に影響を受けたと語る。「旋律はオーケストラに向いている」という言い方もしている。弦楽器を土台に、その周りに色を足す作りだ。
一方で、緊張する場面は別の手を使う。"Scout Bot" や "Planetarium" では、短いパターンを繰り返して少しずつ層を重ねる、ミニマルな書き方だ。同じ形が続くと、聴き手は細かな違いに気づける。単調にならず、エネルギーが保たれる。
録音はハンガリーのスタジオオーケストラ。Furukawa 本人がピアノから指揮をした。エンドロールには歌手 Siobhan Wilson が加わる。
Planet of Lana の別の場面(Steam ストアページ掲載)
パズルとのアナロジー — 解く間は静か、解けたら歌う
Planet of Lana のパズルは、考え込む時間が短い。装置を動かし、Mui に頼って、先へ進む。長考型の作品とは違い、手が止まる時間は少ない。
だから曲も、立ち止まる手前では主張しすぎない。旋律は映像に合わせて短く現れ、先に進むと消える。解く間は静かで、景色が開けた瞬間に主題が立つ。この順番は、パズルの「気づき」と「解放」のテンポとよく合っている。
私の見立てでは、これは「思考に寄り添う音楽」ではなく「移動に寄り添う音楽」だ。長考に合うのは沈黙、旅に合うのは旋律。この作品は後者を選んだ。
Planet of Lana の風景(Steam ストアページ掲載)
聴くべきトラック
まずは "Meet Mui"。曲名のとおり、Mui との出会いを描く一曲だ。公式配信の音源(SonySoundtracksVEVO)で、主題の素直な形がよく分かる。
続いてエンドロールの "End Credits"。歌手 Siobhan Wilson が加わり、旅の終わりを一本の線にまとめる。こちらも公式配信(SonySoundtracksVEVO)だ。
アルバムは主要な配信サービスで聴ける。"Scout Bot" や "Planetarium" の反復の緊張も、あわせて聴いてほしい。
おわりに — 自分が作るなら盗む点
盗むのは「主題を、誰でも口ずさめる形に絞る」ことだ。複雑な和声は後から足せる。最初の旋律が単純なら、場面ごとに楽器や層を替えても、同じ曲だと分かる。
もう一つは、緊張を作る場面だけ反復に切り替える点。旋律で押さず、層で押す。同じ素材で、感情の山と谷を描き分けられる。
続編 Planet of Lana II の発売(2026年8月、Milan Records)に添えて、Furukawa はこう語っている。「旋律は、物語を伝える声の中でも最も長く残るものの一つだ。コントローラーを置いたあとも、記憶の中で物語を続けてくれるのは旋律だ」。台詞のない作品を作る人には、頭に置いておきたい一言だ。
台詞を使わない作品なら、INSIDE のサウンドトラックとも聴き比べてほしい。同じ「語らない」でも、音の使い方は正反対だ。
参考リンク
・Laced Records: Takeshi Furukawa bet big on bold melodies for Planet of Lana
・GamesRadar+: The Last Guardian composer took one look at Planet of Lana and reached out on the spot
・WSHU Music Respawn: Takeshi Furukawa's compelling soundtrack for Planet of Lana
・Milan Records: Planet of Lana II: Children of the Leaf (Original Soundtrack)
・YouTube(SonySoundtracksVEVO): Meet Mui
・YouTube(SonySoundtracksVEVO): End Credits
・補足: 本記事の画像は Steam ストアページ掲載のスクリーンショットを使っている(画面の内容までは確認していないため、キャプションは一般的な表記にとどめた)。
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