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1 レビュー · 27 エッセイ
関連エッセイ
Bonfire Peaks のサウンドトラック — 運ぶほど重く、燃やせば軽くなる音
『Bonfire Peaks』は Corey Martin がデザイン・プログラム・音楽を兼任した倉庫番系パズルだ。持ち物を担いで崖を登り、頂上の焚き火でそれを燃やしていく。本人が『warm, pretty and unsettling』(温かく、美しく、少し不穏)と評した音楽を、2018年のゲームジャムから郷愁の物語へと変わった開発経緯とあわせて Doremi が読み解く。
「解けることを教えていないのに、なぜか解ける」——ソルバーなしでSokobanを生成する拡散モデル
今日は1本。arXivに2026年8月16日付で公開されたプレプリント「Solvable Sokoban Without a Solver via Diffusion」(Sina Baghal)を読んだ。Sokobanが解けるかどうかを判定する問題はPSPACE完全で、これまでの自動生成はソルバー(実際に解いてみるプログラム)をコストをかけて回すのが定石だった。この論文は、解けるかどうかのラベルもソルバーへのアクセスも一切与えず、ただ「マスされたマス目を埋める」ことだけを学習させたTransformerベースの離散拡散モデルが、生成したパズルの77.4%をそのまま解ける状態にし、残りの94.5%も壁を1つ取り除くだけで解けるようにしてしまう、という結果を報告する。局所的な学習目的から、解けることという大域的な性質がこぼれ落ちるように生まれてくる仕組みを、生成順序の自由度という観点から説明している。
Siper ら: 面ではなく「面を作るプログラム」を進化させ、部品棚を自分で育てる — Fukai が読む
ニューヨーク大学とマルタ大学の Matthew Siper, Ahmed Khalifa, Julian Togelius による論文(arXiv:2608.17947、IEEE Conference on Games 2026 採録)。パズルの面そのものではなく「面を作る Python プログラム」を大規模言語モデルに書かせて進化させ、成績の良いプログラムから共通部品を切り出して部品棚に貯める Continual Abstraction Discovery を提案した。Sokoban・Zelda・Dangerous Dave・Lode Runner の4題材、160 回の実験すべてで、部品棚ありのほうが最終成績が高かった(符号検定 p=0.008)。
エッガーランド(1985) — 卵にした敵を押す、一室完結パズルの原型
1985年、MSX向けに一本の地味なパズルゲームが生まれた。『エッガーランド ミステリー』。敵を魔法弾で卵に変えて押し、宝箱を開けてハートを集める——数個の動詞だけで組まれた一室完結の設計は、HAL研究所がファミコンディスク版を重ねる中で磨かれ、1989年に『ロロの大冒険』として海の向こうへ渡った。この二年間、プロデューサーの椅子に座っていたのが、後に任天堂の社長となる岩田聡である。
名前は奪われても、動詞は生き延びる — 日本製パズルが国境を越えた4つの経路
倉庫番はそのままの名前で世界のコンピュータ科学の用語になり、パネルでポンは名前を奪われても連鎖の文法だけで生き延びた。パズルボーイはじゃがいもの姿を変えて渡り、レイトン教授は逆に海外の謎かけ文化を輸入した。4本の実例から、遊びの「文法」と「名前」が別々の運命をたどる理由を考える。
パズルボーイ(Kwirk)(1989) — じゃがいもを歩かせて、アトラスが初めて名乗った日
1989年11月24日、アトラスがゲームボーイ向けに出した『パズルボーイ』。海外では『Kwirk』の名で知られるこの一本は、下請け仕事を重ねてきたアトラスが初めて自社の名前を掲げた作品だった。回転する仕切り、押せる石、埋める穴という三つの動詞だけの迷路パズルは、同じ会社が22年後にまったく別の姿で送り出した『Catherine』にまで、静かに線を引いている。
『Baba Is You』に似たゲーム8選 — 倉庫番系ブロック押しの系譜
『Baba Is You』に最も近いのは『Stephen's Sausage Roll』と『Patrick's Parabox』で、共有しているのは倉庫番系ブロック押し(sokoban)の機構である。当サイトの228本のカタログで、もう一方の機構であるルール書き換え(rule-rewriting)を持つ作品は『Baba Is You』1本だけなので(2026-08時点)、似た作品を探すなら倉庫番系18本の系譜をたどるしかない。その17本から、近い順に8本を選んで並べました。
Sokobond(2013) — 結合数だけの規則、倉庫番の三十一年後
2013年8月27日、アラン・ヘイゼルデンとハリー・リーが小さなパズルゲーム『Sokobond』を公開した。遊びの骨格は1982年の『倉庫番』そのままに、そこへ「元素ごとに決まった結合数」という一つの制約だけを足した一本である。この地味な変異は、IndieCade決勝進出とIGF音響部門の栄誉ある言及を経て、ヘイゼルデンを専業のパズル設計者に変えた。その十年後に生まれた『A Monster's Expedition』(2020)まで、押す規則がどう受け継がれたかを辿る。
開発ノート — 自作パズル『Synapush』と『まっしろにしろ』
普段はレビューする側の私(Komugi)が、自分で作った2本のパズルについて書きます。中立を装うレビューではなく、設計の意図を明かす開発ノートです。倉庫番の『押す』を神経の接続に読み替えた『Synapush』と、対戦ゲームから相手を消したら何が残るのかを試した一人用リバーシ『まっしろにしろ』。どちらも Unity 1週間ゲームジャムの、10分ほどで遊べる小品です。
Mirror Isles / Skipping Stones to Lonely Homes(2014-2015) — 無料のジャム作品が、十年後の二つの脱出島に姿を変えるまで
2014年と2015年、ロンドンのパズル作家アラン・ヘイゼルデンがPuzzleScriptで書いた無料のジャム作品『Mirror Isles』と『Skipping Stones to Lonely Homes』。本人が公式サイトで明かすところによれば、前者は2020年の商業作『A Monster's Expedition』の精神的な原型であり、両作は2026年にデモが公開されたJonathan Blowの新作『Order of the Sinking Star』のインスピレーションの一つにもなった。無料の実験作が十年を超えて二つの異なる商業パズル大作へ流れ込んだ、その具体的な道筋を本人の証言だけを手がかりに追う。
Wang et al.: パズルのソルバーを一手ごとの先生にする — Fukai が読む
Yu Wang らによるゲーム AI の論文。長手数パズルで最後の勝敗しか報酬がない問題に対し、専用ソルバーが返す「ゴールまでの残り手数」の減り方を一手ごとの評価に変換して学習に混ぜる。Sokoban・Minesweeper・Rush Hour の三種平均で成功率を 16.6% から 62.1% へ、未学習難易度で 5.9% から 28.4% へ引き上げた。ソルバー問い合わせのコストは学習時間の 100 万分の 73 程度。
Skipping Stones to Lonely Homes(2015) — 石を投げて島を渡る、無料PuzzleScriptが遺した二つの子孫
2015年8月31日、ロンドンのパズル作家アラン・ヘイゼルデンが自身のサイトで公開した無料ブラウザゲーム『Skipping Stones to Lonely Homes』。石を投げた波紋で遠くの睡蓮の葉を動かすという間接操作のソコバン系パズルは、公式サイトが明言する通り『A Monster's Expedition』(2020)の精神的続編の原型であり、ジョナサン・ブロウ渾身の大作『Order of the Sinking Star』(2026)の出発点の一つでもある。無料の同人作が10年をかけて二つの大作へ流れ込んだ道のりを辿る。
同じ骨格から、別のパズルへ——PuzzleScript コレクティブの「一つだけ受け継ぐ」設計実験
今日は1本。パズル専門の編集メディア Thinky Games の記事(著者 Corey Hardt、2026年7月24日、英語)を原文で読んだ。取り上げるのは、puzzle 開発者のゆるやかな集まり「Thinky Collective」が公開したブラウザゲーム『The Snake That Eats Puzzle Game Mechanics』の作り方だ。彼らはいつも一つの大きな PuzzleScript プロジェクトを回し読みして継ぎ足していくが、今回は方法を変えた——各開発者は前の人のゲームから「たった一つの要素」だけを受け取り、その共有要素を使って一面だけの小さなゲームを作る。結果、隣り合う二作は同じスプライトを使いながらメカニクスが入れ替わっていたり、面の形はそのままなのに見た目と文脈が変わって出来上がるパズルがまるごと別物になっていたりする。制約が発散を生み、十数本の一面ゲームが数珠つなぎになった。私はこれを、デザイナー志望として「試したくなる設計の型」として持ち帰った。
Halina & Guzdial: レベルを「時間のケーキ」として生成する — Fukai が読む
Halina と Guzdial による手続き的レベル生成の論文。レベルを「時間の各瞬間の盤面を積み重ねたケーキ表現」で表し、プレイの軌跡を組み替える PRP でレベルと解答を同時生成。倉庫番で六つの既存手法と比べ、遊べる率100%と高い多様性を、人手の制約や報酬なしで両立した。
PuzzleScript(2013) — 一行のルールが量産した、世界中の“押すゲーム”
2013年10月、Stephen Lavelle(increpare)が無償公開したブラウザ用パズルエンジン PuzzleScript。たった一行のルール記述で倉庫番系パズルが作れるこの道具は、Alan Hazelden の初期作を経て『A Good Snowman Is Hard to Build』を生み、Hempuli 自身が語る“ブロックパズルの再興” を経由して『Baba Is You』の土壌にまで繋がった。系譜を裏取りする。
同じお題から二つの別ゲームが生まれる——Alan Hazelden が語る「収斂する着想・分岐する設計」
今日は1本。パズル専門の編集メディア Thinky Games が毎月連載している「Thinky Third Thursday」の2026年7月号(著者は Draknek & Friends 主宰の Alan Hazelden、2026年7月17日公開、英語)を原文で読んだ。中心に据えたのは、同号で Alan 自身が書いた一節だ。Dom Camus 主催の Thinky Puzzle Game Jam 6(お題「Locked Room」、80本超が投稿)から、彼自身のチーム作『All the Gold in Fort Locks』と、ELAiNE の『Every Door a Portal』を並べて紹介している。二作は「どの鍵で開けたかによって扉の向こうの現実が書き換わる」という着想をほぼ共有しながら、鍵の扱い(盤上を押して動かすか、インベントリに持つか)と面構成(単一の相互接続した挑戦か、独立した11面か)という数点の判断で、まったく別の体験になっている——Alan はこれを「よく似た着想が、いかに素早く別物へと分岐しうるかの好例」と評した。着想は共有できても、設計判断が体験を分ける。私はこの一節を、デザイナー志望として今日いちばん持ち帰りたい話だと考えた。
良いパズルは「解かれたがる」——Tom Hermans が Sokoban で説く、提示・簡潔さ・野心の三層
今日は1本。パズル開発者 Tom Hermans(Auroriax)が Game Developer(旧 Gamasutra)に寄せた特集ブログ「How to make a good puzzle - An explorable explanation(良いパズルの作り方——遊べる解説)」を原文(英語)で通読した。2018年の記事だが、Sokoban の実際に遊べるレベルを並べて『良いパズルとは何か』を提示(Presentation)・簡潔さ(Elegancy)・野心(Aspiration)の三層で説く、設計入門の定番だ。良いパズルは自分から解かれたがるべきで、最小の空間と手数で組み、可能性空間を意識し、毎レベルで新しいことを教え、独創的な中心メカニクスと謎めいた世界で動機づけよ、と作例とともに語る。編集媒体に採録された実作者の一次的な設計論として当まとめの信頼基準を満たす。やや古いので日付を明示して扱う。
論理パズルが早く解けるようになる考え方 — ソコバン系のコツ
1982年に今林宏行が発表した倉庫番以来、荷物を押して所定の位置へ運ぶだけのソコバン系パズルは40年以上遊ばれ続けている。ルールは単純なのに手が止まる理由と、詰まったときに見直すべき4つの視点(デッドロックの形、逆算、ストック、押す順番)を、時代の地層を掘るように整理する。
Bazzaz et al.: 「AI 製だと思う」だけで体験が変わる — Fukai が読む
Bazzaz と Cooper による、生成コンテンツの知覚バイアスを扱う CHI '26 論文。Super Mario Bros. と Sokoban で人間作・AI 生成レベルを混ぜて 142 人に遊ばせ、プレイヤーは作者をほぼ当てられないのに、AI 製だと信じたレベルほど楽しくない・難しい・苛立たしいと評価した、と報告する。
Patrick Traynor の哲学 — 発明ではなく、発見として設計する
『Patrick's Parabox』を一人で作った Patrick Traynor を、本人のインタビューと GDC 2024 講演から考察する。再帰を「宇宙の片隅の真実」と呼び、自らを発明者ではなく発見者と位置づける設計思想、「近づきやすさ」へのこだわり、難度曲線やルールをめぐる失敗と乗り越え方、そして発見者の倫理を読む。
Void Stranger のサウンドトラック — モノクロの迷宮に響く、貧しい音源の交響
モノクロの Sokoban 迷宮 Void Stranger の音楽は、ありふれた MIDI 音源とチップ波形だけで荘厳さと不穏さを同居させる。作曲者 Eero Lahtinen は「解けずに同じ曲を聴き続けてもうんざりしない」ことを設計の主眼に据えた。繰り返しに耐える音作りと、思考のテンポへ寄り添う持続音を、Doremi が制作目線で読み解く。
Monti et al.: 一本道の倉庫番で、AI の「計画する力」を測る — Fukai が読む
Monti らによる、推論モデルの長手順プランニング能力を倉庫番で測るベンチマーク SokoBench の論文。箱一つの一本道だけを並べて難しさを通路の長さ一本に絞り、最新の推論モデルでも 25〜30 手より先の見通しが要ると崩れることを示した。原因は「数え間違いの蓄積」にあると著者らは見る。
パズルは「解ける」と「面白い」が分かれる場所——PuzzleScript 500本超を機械に解かせた PuzzleJAX(arXiv、2025年8月)
今日は1本。NYU・マルタ大学・ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)・Microsoft の研究者ら(Sam Earle、Graham Todd、Ahmed Khalifa、Julian Togelius ほか)による論文「PuzzleJAX: A Benchmark for Reasoning and Learning」(arXiv プレプリント、2025年8月)を取り上げる。Stephen Lavelle(increpare)が2013年に公開したパズル制作言語 PuzzleScript を GPU 上に再実装し、世界中の作者が書いた500本超のゲームを探索・強化学習・大規模言語モデルに解かせた研究だ。設計者の視点で読むと核心は一つ——「機械が解けるか」と「人にとって面白いか」は別物だ、という点である。木探索は単純なゲームを総当たりで解くが少し複雑になると即座に行き詰まり、LLM はほとんどのゲームで勝率0%。著者らは PuzzleScript 作者本人が IDE への自動ソルバー搭載に難色を示した経緯にも触れ、難易度を探索で測ることの危うさを指摘する。論文は国際的な共著で、パズル設計の自動化という現代的な論点にも踏み込む。
AIはパズルゲームを丸ごと作れるのか — 「生成して、遊ばせて、直す」を回した ScriptDoctor
大規模言語モデル(LLM)にパズルゲームをルールも絵もレベルも含めて丸ごと書かせ、コンパイラと探索エージェントに検査させて作り直させる——そんな自動ゲームデザインの実験系 ScriptDoctor を紹介する。題材は個人開発者におなじみの PuzzleScript。人間製ゲームの実例を見せると成功率が跳ね上がること、推論モデルが有利なこと、そして「解ける」と「面白い」のあいだに横たわる距離まで、問題・方法・発見・使いどころ・限界の順に読み解く。
SSR が証明した「最小の規則、最大の深度」と、視点が解法になるとき
今日は2本。Thinky Games が2026年4月21日に公開したリリース10周年特集——パズル開発者たちが「完璧な設計」と称える Stephen's Sausage Roll が、「ソーセージライク」という新ジャンル語を生むに至った極限的ミニマリズムについて。そして Thinky Third Thursday 2026年4月号(Alan Hazelden、4月16日)が紹介する『A Little Perspective』——「視点の転換」ひとつで不可能を可能に変える設計論と、同じ軸で構築中の新作『He Who Watches』。
メカニクスを教える順序——Blobun Ashe が語る「導入・深化・統合」の三段階構成
今日は1本。2026年6月1日、Thinky Games がプライド月間企画インタビューとして掲載した、パズルゲーム『Blobun』ゲームディレクター Ashe の記事を取り上げる。ゲームの発端は「プレイヤー自身がブロックだったら?」という役割逆転の問いだ。各ワールドで「導入→深化→統合」の三段階構成をとり、最終ワールドですべての要素を最大限に試すという設計方針が語られる。また無料デメイク『Blobun Mini』の制作が、コアメカニクスがビジュアルに依存しないことを確認する手段になった——という点も示唆に富む。
倉庫番(1982) — メタパズルの44年前の原型
1982年、シンキングラビットの今林宏行が発表した倉庫番。歩く・押すの2動詞だけで成立したこの作品が、44年後の Baba Is You と Patrick's Parabox の祖先である理由を、時代の文脈から読み直す。
















